学習通信090223
◎一人ではできなかった威力を発揮……
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景気指標
アラサーにつきまとう職難
総務省の労働力調査(二〇〇八年平均)の結果を眺めていて、おやっと思った。完全失業率は前の年より〇・一l高い四・〇%。それを年齢別に分解すると、経済の烈震がどの世代を集中して襲っているかが読み取れる。昨年秋から企業による採用内定の取り消しがそこここで報じられている。その被害をまともに受ける十五〜二十四歳の失業率は、意外にも下がっている。〇七年の七・七%に対して〇八年は七・二%だ。大幅な改善といっていい。悲惨なのは、そのすぐ上の世代だ。二十五〜三十四歳の失業率は四・九%から五・二%に。〇・三ポイントUPという悪化幅は六十五歳以上の高齢世代と並んで最も大きい。ひと口に若年雇用というが、ひと世代違うだけで、なぜこれほどの格差が生じたのか。これを解析しないことには対策の手立ても定まらない。
厚生労働省の職業安定局に聞くと次のような答えが返ってきた。▼高校生、大学生とも総じて新規学卒者の就職状況の改善は昨年も続き、企業側は今も新卒採用の計画性を保とうと努力している。
▼二十五〜三十四歳は就職氷河期に直面した世代で、その試練をくぐり抜けられず今もフリーターに甘んじている人が多い。
フリーターの数は二十五〜三十四歳が九十二万人。三十五〜四十四歳の二・四倍だ。年長フリーターなどとも呼ばれる。このスタイルを地でゆく人は、正社員として就職するのが新卒者より難しい。
はやり言葉でひとくくりにするのは乱暴かもしれないが、今のアラサー(三十歳前後)は職の苦労につきまとわれている職難世代だ。仮にこのまま十年たてば、その時代にはアラフォー(四十歳前後)が同じ憂き目に遭う。四十年後はオールドフリーターである。
社会人への出発点で不可抗力のハンディキャップを背負わされ不条理も感じるだろうが、まずは本人の奮起と渾身(こんしん)の努力が何としても必要だ。それを国、地方自治体、そして経済界がどう支えるか。アラサー職難対策は時間との闘いである。(編集委員大林尚)
(「日経」20090223)
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明日への視点
全国的反撃広がる足場
「非正規切り」と労組
昆 弘見
派遣や期間工として働く非正規雇用の労働者が、大企業の職場から大量に放り出されているいまの状況は、日本社会が経験したことがない憂えるべき事態です。厚生労働省の調べでは、三月末までに約十二万五千人、派遣業界団体の試算では四十万人になるとみられ、さらに悪化することが危惧(きぐ)されています。
注目されるのは、こうした事態に「人間を使い捨てにする大企業の身勝手は許せない」と、非正規雇用の労働者たちが全国各地で労働組合に加入し、解雇撤回、正社員化を要求してたたかいに立ち上がっていることです。全労連(全国労働組合総連合)の調べによると、昨年十一月以降わずか三ヵ月余の間に、労働組合を結成、あるいはローカルユニオンに加入して立ち上がった例が全国で五十六に達したといいます。
非正規雇用の労働者の組織化が、ごく短期間にこれほどの広がりですすんでいるのは、日本の労働組合運動のなかでも初めてといえる画期的な出来事です。派遣社員や期間社員の多くは、正社員になることを夢見て、早出、残業、休日出勤を率先して引き受け、年休もとらずサービス残業もすすんでするなど、正社員以上に必死で働いてきました。その回答が解雇という仕打ちです。その怒りが、たたかいに立ち上がる原動力になっています。
もちろん、だからといって簡単に労働組合ができるわけではありません。運動に精通している全労連の地方組織、JMIU(全日本金属情報機器労組)など産業別労組が、昼夜を分かたず本腰を入れた支援、援助に力を発揮しています。正社員を中心にした既存の労働組合と非正規雇用の労働者の強い結びつき、連帯のたたかいがいま新しい段階を迎えたと感じます。
労働組合は、企業と対等に交渉する強い力をもっています。そのことを示す成果もあがっています。大企業が昨年秋から、競うように期間社員の中途解雇をうちだしたとき、いすゞ自動車の期間社員が労働組合を結成し、労働契約法違反だと企業を追い詰め、撤回させました。これが他の企業にも広がり、期間社員の中途解雇の動きはピタッと止まりました。派遣社員もマツダなどで労働組合を結成して派遣会社と交渉して解雇を撤回させたり未払い賃金を支払わせるなど、一人ではできなかった威力を発揮しています。
労働組合に結集して大企業と直接交渉することと並行して、発展しつつあるのが行政機関にたいする申告運動です。いすゞ自動車や日本トムソンの労働者が、「偽装請負」で違法に働かされてきた事実を、厚生労働省の労働局に申告しました。全労連は、この申告運動を全国的な大運動としてとりくむとし、諸団体に協力をよびかけました。
これは現行法を活用して「派遣切り」を止める力にしていこうというものです。非正規雇用の大部分は、たとえ契約期間満了の「雇い止め」であっても、「偽装請負」など違法状態で働かされたあげくに解雇されている実態があります。派遣労働は、同一業務で最長三年を超えて働かせる場合は、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し出る義務があります。大企業は、さまざまな違法なやり方で、この義務を逃れてきました。いま解雇されている人たちは、企業が法律を守り、政府が厳正に監督・指導していれば、とっくに正社員になっていた人たちです。
労働局への申告運動にとりくむ転機になったのが今月四日の日本共産党の志位和夫委員長の国会質問でした。「偽装請負」「違法クーリング」など違法状態で働かされている事例を具体的にとりあげた追及に、舛添要一厚生労働大臣は「偽装請負」を派遣期間として通算することなど重要な答弁をおこないました。違法状態で働かせていた事実を法にもとづいて厳正に是正するのは当然です。労働組合をつくり、申告もおこなって、大企業に「首切りやめよ」「雇用責任を果たせ」と迫っていくことは、日本をまともな社会にする意義あるたたかいとして前進が期待されます。(国民運動部長)
(「赤旗」20090223)
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アラサー
アラサーとは「アラウンドサーティ(30歳前後)」の略である。女性向けファッション誌からその言葉は生まれ、衣料業界等で広く使われるようになった。2003年現在の28〜32歳の女性(1975年−1979年生)を指す。彼女らは高校生だった1990年代半ばにルーズソックス、プリクラ、携帯、茶髪等といった流行を作り出し、次々に社会現象を巻き起こしてきた。一般に30歳前後は結婚や出産を迎える時期だが、ファッション誌等を参考にして比較的派手なものでも次々と購入するし、エステやヨガ、旅行、習い事にも熱心。アパレルメーカーもこの世代に対する新しいカジュアル感を加味した、従来にない「通勤着」ブランドを創出している。アラサーの前の世代、団塊ジュニア世代(1971−1974年生)の女性が1年当たり100万人いてバブル景気の時代に社会にでたのに対し、アラサーは80万人前後と数も少ない。2008年の流行語大賞を取った「アラフォー」は、「アラサー」をもじったものとされる。また、還暦前後世代を表す「アラカン」という派生語も生まれている。
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』
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◎「アラサー職難対策は時間との闘いである」と。