学習通信080311
◎イージス艦は、ものすごく特殊な船……

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「漁船側に重大過失」自民・大前議員、地元会合で発言

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸の衝突事故をめぐり、自民党の大前繁雄衆院議員(兵庫7区)が、神戸市内で8日にあった党兵庫県連の会合で、「漁船側に重大な過失がある」などと発言していたことがわかった。大前議員は「公正な調べによる原因究明を求め、事故の再発防止を訴える趣旨だったが、軽率だった」と話している。 

 大前議員は県連総務会のあいさつで事故に触れ、「双方に過失があったはずで、公正な立場から原因究明にあたるべきだ」とし、漁船側に「重大な過失があるが、そのことには一言も触れられていない」と述べたという。 

 さらに再発防止の重要性を訴える中で「ライフジャケットをつけていれば浮いてくるはずで、大規模な捜索活動はいらなかった。(地元漁協関係者が捜索の際に)これみよがしにライフジャケットを身につけていた」とも話したという。 

 大前議員は朝日新聞の取材に「捜査が終わっていない段階で(清徳丸側に)重大な過失がある、と断定したような印象を与える発言は軽率だった。『これみよがしに』などの表現は行き過ぎだったと思う」と話した。 

 大前議員は安倍内閣で防衛政務官を務めた。 
(「朝日」20080309)

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《社説》

大本営発表の復活はご免だ

 石破茂防衛相、増田好平次官は、防衛省幹部の定例記者会見を減らしたいと表明した。不祥事続きの防衛省は、情報窓口を絞って都合のいい情報だけを流す「大本営発表」を復活させたいのか。容認できない。

 防衛省は大臣、次官、報道官、統合幕僚長、陸海空幕僚長の7人がそれぞれ定例会見をしている。石破氏らは会見削減の理由を(1)イージス艦事故での説明が会見者によって二転三転した(2)7人の会見は他省に比べ多い――などと説明する。

 ともに理由にならない。第1に、事故が起きた時に情報が交錯するのは普通であり、それを根拠に普段から定例会見を減らしておこうと考えるのは論理の飛躍である。石破氏による航海長からの聴取をめぐって情報隠し疑惑があるなかでの会見削減論である。都合の悪い情報を隠したいためではないかと疑わせる。

 第2に、他省と回数を単純比較する形式論理には意味がない。まるめて言えば、定員27万人、予算5兆円近い防衛省は、日本最大の役所だ。報道すべき情報も多い。一方、例えば外務省は6000人、7000億円以下だ。数字に着目する防衛省の形式論理を逆用すれば、会見回数は他省よりも1ケタ多く必要になる。

 会見削減論はシビリアンコントロール(文民統制)をもっぱら上から見た結果のようにみえる。それは直接的には選挙された政治家による軍の統制だが、より広く、民主主義国家における市民・国民による軍の統制でもある。国民は選挙した政治家を通じて軍を統制し、同時にメディアを通じて軍を監視する。

 四幕僚長に記者会見で恥をかかさぬよう各組織には緊張感がある。会見は内向きな軍事組織の意識を外に向けさせる機能がある。他省並みの定例会見数になれば幕僚長たちの会見はなくなる。彼らをメディアを通じた国民の目の届かぬ奥の院に閉じ込めてしまう。それは危ない。

 2004年のイラク自衛隊派遣前にも似た動きがあった。隠したい情報でもあったのか、福田康夫官房長官は守屋武昌防衛次官に幕僚長会見をやめさせるよう指示した。メディア側と合意できず、会見は続いている。石破防衛庁長官の時代である。学習効果がないのは困る。 
(「日経」20080311)

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イージス艦衝突
元護衛艦長が指摘
後進で回避は不自然
一分あれば、かじ取りで避けられる

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 「衝突回避のために後進に入れたというのは不自然だ」──。イージス艦「あたご」が漁船「清徳丸」に衝突した事件。防衛省・海上自衛隊の国民軽視に怒った元護衛艦艦長が本紙に重大な指摘を寄せてくれました。
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 衝突時の「あたご」の対応はめちゃくちゃだ。自動操舵(そうだ)で運航していたというが、一分もあればかじ取りはできます。イージス艦は他の護衛艦などと比べてずっと船の角度を変えられるのが早いのです。私も(イージス艦の)見学会で説明を受けて実際にさわってみたけれど、かじ取りの機敏さが全然ちがいます。

 ところが防衛省の発表では、衝突一分前に自動操舵を解除して後進に入れたという。その前にやることは、かじを切っての回避行動のはずです。法律的にも「あたご」側に回避義務があったわけですから。

 わざわざ後進に切り替えたのはなぜか? 百パーセント私の予想があたっていると思うが、(最後まで「清徳丸」に気付かずに)ぶつかったからです。そのために急きょもとの場所に戻らないといけないので後進をかけた。ぶつかったという前提のもとに行う動作です。なぜ、かじ取りをしなかったのか。ぶつかったということが分からなかったからではないでしょうか。

 本来、一分間あったらかじ取りで回避することはできる。でも衝突した後では、面かじも取りかじもないでしょう。衝突後の発表でも「かじ取り」の言葉が全然でてこない。恐らく、ぶつかってから自動操舵をやめているからです。

 運航スケジュール
 決めた艦長の責任

 「時間」が問題なんですよ。運航に関するスケジュールは、艦長の専権事項です。なぜ衝突現場を午前四時ごろ、それも視界の見えにくい時間帯に通ったのか。しかも監視要員の交代直前です。艦長は、なにもかもおかしなセッティングをしている。

 艦長が寝てたとか、寝てないとかの問題じゃない。横須賀に寄港するために通る東京湾の入り口の浦賀水道が難所とはいえ、昼間なら問題ない。一番怖いのは日の出前です。私が艦長なら二時間ぐらいあとにずらしています。

 漁船の漁場への通り道という認識をもっていたなら、照明で明るくしていたと思う。これも艦長の専権事項。照明を多くすることは、一定は許可されている。まったく対策がなかったのは、緩みやたるみでしょう。

 漁船群のなか、あの時間帯で自動操舵でいくということ自体、めちゃくちゃだ。すべて艦長の問題。当直土官は監視の責任者だが、スケジュールを決めたのは艦長です。

 イージス艦は、ものすごく特殊な船です。なんでこんな特殊な船を日本に六隻も配備するのかわからない。自動操舵でハワイから日本まで航行するのは楽だったでしょう。ただ、外海と近海では走り方が当然違ってくる。船の込む領海に入っても自動操舵を続けたのはおかしい。

 「そこのけ」は事実
 他にも事故はある

 イージス艦は実際に乗ってみるとわかるが、甲板が一般の護衛艦より十bは高い。なぜ高くしているのかは、軍事機密だからいえませんが、目視の場合でも高いほうが監視しやすい。今回は三十分前から(漁船を)認識していたはずです。「十二分前」という発表には、疑問が残ります。

 海自に勤めていてよく分かりました。(自衛艦の)「そこのけそこのけ」という態度は、指摘される通り。どうしてもそうなっちゃう。漁船のほうが小回りがきくし、必死でよける。私は、個人的に漁場を通る時に注意をしていた。そのために独自の情報をもっていました。

 海自は護衛艦を百五十隻保有して、それが全国に配備されている。どこでも同様のことがおこりえます。実際に事故はおきていますが、不問にふしているだけ。あちこちでおきていますよ。ちょっとした事故なら示談金などの形でおさめています。表面にでていないだけ。かすった程度は、私もありますよ。

 海自のOBは、(自衛隊に)不利なことはいわない。私はあまりにも腹がたったので話しました。漁民の人のためにも共産党と「赤旗」で事実を精査してもらいたい。
(「赤旗」20080310)

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◎「防衛省・海上自衛隊の国民軽視に怒った元護衛艦艦長が本紙に重大な指摘」と。