学習通信080110
◎勇気を伴わない賢さなど何の役にも立たない……

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 08国民春闘は、長い春闘の歴史のなかでも、時代を画する、きわめて重要な春闘となるに違いない。われわれが今日むかえているのは、運動しだいで、平和と民主主義の前進にむけて、情勢を大きく切りひらいていくことのできる春闘だからである。春闘の前途には少なくない障害や困難が現れるであろう。しかし、どのような権謀術策も強権発動も、広範な国民的運動の広がりや国民の主権行使の前には力をもちえない。

 重要なのは、労働者・国民の状態と内外情勢の動向をしっかり見きわめながら、圧倒的な国民に支持される春闘諸要求をはっきりと提起し、それらの要求実現をめざすたたかいを自公政権の悪政と正面から対決する運動とむすびつけて発展させることであろう。求められているのは、リアルな労働状態や運動の現状から出発して、現実に職場・地域を草の根から変えていくような春闘への取り組みであろう。
(全労連・労働総研編「2008年国民春闘白書」学習の友社 p5)

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ゆうPress
NPO法人 POSSE(ポッセ)
使えるじゃん 労基法
仲間といっしょに 格差に立ち向かう

 「企業の奴隷になるのはごめん。企業に法律を守らせよう」。フリーターや学生らが立ち上げた「働く問題」に取り組むNPO法人POSSE(ポッセ)が注目されています。格差社会に立ち向かう若者たちが手にしているのは「法」と「仲間」でした。 平井真帆

 POSSEとは、ラテン語で「力を持つ」という意味。英語のスラング(俗語)では「仲間」という意味でも使われています。

 2006年6月に発足後、月に一度、弁護士を招いて労働法などを学ぶ「カフェイベント」を開催したり、労働相談にとりくんでいます。

 メールや電話を通じて「不当解雇」や「賃金不払い」など、毎月十数件の相談が寄せられています。相談に応じてユニオンを紹介したり、行政に一緒に行くなど解決の手助けをしています。

 会員は現在、約160人。活動する青年から最も多く聞かれた動機は、「こんな働き方はおかしい。自分にも何かできることがあれば」。

カルテ
 2006年の夏、POSSEは、のべ60人ほどの協力を得て、「若者『シゴト』3000人調査」を実施しました。対象は15歳から34歳までの「働く青年」。その結果に代表の今野晴貴さんたちは、がくぜんとしました。

 調査した若者の半数以上が「労働基準法」の具体的中身を知っているにもかかわらず、知らない青年との間には、有給休暇取得率や残業代の支払いに、ほとんど差が見られなかったのです。青年は法律を「知らないから使えない」のではなく、「知っているのに使えなかった」のです。

 「法律にはこう書いてあると、いくら教えられてもそれだけではだめ。一人じゃ使えないし、使い方がわからない」。労働法の中身を知らせることと同時に、「法律を使わなければ。使い方を教えなければ」。今野さんたちの強い確信でした。

 POSSEでは「しごとカルテ」を使って、まず問題を一緒に発見することから始めています。簡単なクイズに答えていくうち、「労働者の権利」に気がつく仕組み。

 「明日から来なくていい」と言われた場合、「なぜ辞めなければいけないのか理由を説明させ、1カ月分の給料を請求することができる」と知ると、多くの青年が「え! 1カ月分ももらえるの?」と驚きます。

 もうひとつ、普及に力を入れているのが『しごとダイアリー』。シフトや労働時間のほかに「気になったこと」などを書き込める手帳です。「ダイアリー」にそって日記をつけているだけで、万が一、裁判になった場合、メモが重要な法的証拠になるのです。

まさか
 昨年12月16日、クリスマスを前に若者でにぎわう東京・渋谷でPOSSEは、街頭労働相談「ジョブ☆クリ〜しごとの悩み、サンタさんに相談しよう〜」を行いました。

 神奈川県座間市の安藤雅幸さん(25)=仮名=は「初めてイベントの手伝いをした」と話します。POSSEにかかわるようになったのは「格差社会に対する怒りがあったから」。安藤さんは派遣会社に登録し、仕事先を転々としていました。

 安藤さんが紹介された医療機器の製造工場に勤めていたときのこと。2週間たったある日、仕事が終わると派遣会社から電話がかかってきました。「悪いけど、今日限りでやめてもらいます」。「それはないでしょう」と詰め寄る安藤さんに派遣会社のスタッフは、「2週間は試用期間だった。あなたには向いていないのでやめてもらう。2週間以内の試用期間なので解雇予告は必要ない」と。

 「こういうことがあるのは知っていました。まさか自分がやられるとは、とショックでした」。そんな思いでいたとき、ネットでPOSSEを見つけ、イベントに参加するようになりました。

問題は
 「問題を問題だと思えないところが問題」。今野さんたちはそう考えています。例えば賃金不払いがあっても、「自分が上司とうまくいっていないから給料を払ってもらえない」と思ってしまう。「最近、うつっぽいんです」と悩む青年に理由をたずねると、「給料をもらっていなくて落ち込んでいるんです」―。多くの青年は、企業からの不当な扱いを「自己責任」、「人間関係のもつれ」と、とらえてしまうのです。

 今野さんは言います。「今まで企業は、法律を守らなくてもいいっていうのが当たり前だった。最たるものがサービス残業。圧倒的な力を持ち、しまいには企業が『法律の方が悪いんだ』と言い出した。僕たちは『法律を守らない企業が悪い』という当たり前のことを主張していきたい」
(「赤旗」20080107)

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《潮流》

年末の帰省ラッシュで駅は荷物を抱えた家族連れなどがあふれました。しかし、さまざまな事情で帰省できない人もいるでしょう

▼「エミールと探偵たち」や「ふたりのロッテ」などの児童文学で知られるドイツの作家、エ一リッヒ・ケストナーに「飛ぶ教室」という作品があります。そこに登場するマルチンという少年は寄宿学校が冬期休暇になっても家に帰る旅費がありません

▼友達が次々に帰っていく中、一人で涙をこらえるマルチン。それを知った舎監のベク先生はクリスマスの贈り物として旅費を手渡します。あきらめていた息子の帰りに驚くマルチンの両親。家族三人が幸せに過ごす時間が温かな文章でつづられています

▼ケストナーはナチスに抵抗したことでも知られています。彼の著書は、ナチスの思想弾圧である「焚書(ふんしょ)事件」で燃やされました。ブレヒトやゴーリキー、ヘミングウェー、マルクスなどの著書と一緒に、自分の本が火に投げ込まれるのをケストナーはじっと見つめていたそうです

▼ボクシングの試合で観衆がヒトラー式の敬礼をしてドイツ国歌を斉唱したとき、一人で座り続けていたという話も残っています。秘密警察のゲシュタポによって二度逮捕され、ついに執筆も禁止されました

▼彼は「飛ぶ教室」の「まえがき」にこう書いています。「賢さを伴わない勇気は乱暴であり、勇気を伴わない賢さなど何の役にも立たない」。「賢さ」と「勇気」で歴史を前にすすめる。来年をそんな年にしたいものです。
(「赤旗」20071231)

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◎「求められているのは、リアルな労働状態や運動の現状から出発して、現実に職場・地域を草の根から変えていくような春闘への取り組み」と。