学習通信071212
◎いかなるPR活動も禁じる……

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政党ビラ配布有罪
東京高裁が逆転判決
「住居侵入」で罰金

 政党ビラを配るため東京都葛飾区のマンションに立ち入ったとして住居侵入罪に問われ、二番で無罪判決を受けた僧侶、荒川庸生被告(60)の控訴審判決が十一日、東京高裁であった。池田修裁判長は「憲法は表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、他人の財産権を不当に害することは許されない」として東京地裁の無罪判決を破棄、罰金五万円(求刑罰金十万円)の逆転有罪判決を言い渡した。

 二審判決は、住民がビラやチラシの配布禁止を明示している場合、各戸のドアポストだけではなく、集合ポストヘの配布のための玄関ホールヘの立ち入りも「住居侵入罪を構成する」と厳格な判断を示した。被告は判決を不服として最高裁に上告した。

 池田裁判長は判決理由で、住民がチラシなどの投函(とうかん)禁止の張り紙を玄関ホールに掲示していたことを挙げ、「被告はビラ配布が許容されていないことを知っており、エレベーターや各階廊下はもちろん、玄関ホールヘの立ち入りも住居侵入罪にあたる」と判断した。

 鈴木和宏・東京高検次席検事の話
 極めて妥当で常識的な判決だ。

■専門家の見方

法の適用拡大を危惧
 奥平康弘東大名誉教授 (憲法)の話

 立川反戦ビラ事件は自衛隊宿舎だったが、今回は一般住宅のため、法の適用範囲が広がるのではないかと危惧する。判決ではポストヘの投函(とうかん)を禁じたマンション管理組合の決議を金科玉条として、個別の住民の情報を受け取る権利性が抜け落ちている。ビラまきが許されるケースもあったが、今回の判決に従えば、住居侵入罪が当たり前に適用される可能性もある。マンションでのビラまきなど、いかなるPR活動も禁じることがいいのか疑問だ。

商業ビラ放置と矛盾
 愛敬浩二・名古屋大教授 (憲法)の話

 広告などの商業ビラ配布が放置されているのが現状なのに、政党ビラだけを排除するのは整合性が取れない。民主主義社会では多様な意見が流通することが非常に大事で、ビラが必要なければ住民が捨てればよく、コミュニケーション手段として相手にかける負担は小さい。マンション内に第三者が立ち入ることで生じる「財産権の侵害」の程度も低い。刑事罰を適用すれば表現の自由が過度に抑制されてしまう。
(「日経」20071212)

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解説
市民の萎縮狙った弾圧

 葛飾ビラ配布弾圧事件で東京高裁判決は、「(政党ビラ配布の)目的は不当とはいえず、住居侵入罪を構成する違法行為とは認められない」とした一審の無罪判決を「事実誤認」などと退けました。しかし、一審判決は「集合住宅でビラを配っただけで罪になるのか」という常識的な市民感情にこたえたものです。判決後、マスコミも「無罪は当然」と社説などでこぞって表明しました。

 高取判決は、憲法で保障された言論・表現の自由、政治活動の正当性をおかすもので、断じて認めることはできない不当判決です。

 判決は「新たな証拠を検討」したといいますが、審議はわずか三回しか行われませんでした。

 「言論と表現の自由は民主主義の根幹」と堂々と主張する荒川庸生さんと弁護団に対し、検察側の証人として新たに採用されたのは、現場マンションの設計に携わった一級建築土だけでした。犯罪性を明快に否定した一審をくつがえす新たな証拠は何も示されませんでした。高裁判決は、憲法に基づく公正な判断という、自らの役割を放棄したに等しいものです。

 そもそも事件の本質は、日本共産党の活動妨害を狙った警備公安警察・検察による弾圧事件です。国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件など一連のビラ配布弾圧事件と同様に、自由と人権を踏みにじり、政治的活動など市民の運動ヘの委縮効果をねらった卑劣極まりないものです。高裁判決は、この公安警察・検察の捜査の違法性、不当性に何ら言及していません。

 荒川さんは、逮捕・起訴されてから約三年間、北海道から沖縄まで、無実を訴えてかけめぐり、全国で大きな共感と支援の輪が広がりました。荒川さんと支援者の思いは、「ビラ配りという日常的な行為が犯罪になる、そんな社会にしたくない」という当然のものでした。憲法、民主主義、自由を守る世論と共同の輪をさらに広げ、最高裁で無罪を勝ちとるためにたたかいは続きます。(阿曽隆)
(「赤旗」20071212)

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◎「事件の本質は、日本共産党の活動妨害を狙った警備公安警察・検察による弾圧事件……国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件など一連のビラ配布弾圧事件と同様に、自由と人権を踏みにじり、政治的活動など市民の運動ヘの委縮効果をねらった卑劣極まりないもの」と。