学習通信070117
◎企業ドラマの増加……

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相次ぐ買収劇 ドラマにも

 日本経済の回復に合わせるように、企業を題材にしたドラマが増えている。買収や合併が日常の話題となり、企業で起きる人間ドラマが娯楽の対象になりつつある。

 NHKが二月十七日から放送する連続ドラマ「ハゲタカ」(土曜夜、全六回)は、日本企業を買いあさる外資系企業買収ファンドの姿を描く。主人公は元銀行員で、今は外資系ファンドで働く男・鷲津(大森南朋)。彼と、銀行時代に鷲津の上司だった芝野(柴田恭兵)、若手IT企業社長、西野(松田龍平)の三つどもえの争いを描く。

 担当の訓覇圭ディレクターによると、企画を思い守ったのは約二年前。当時はライブドアとフジサンケイグループが、ニッポン放送の買収を巡り攻防を繰り広げていた。「同業者が買収の対象になっていることに衝撃を受け、企業買収をドラマにできないかと思った」という。「経済活動は戦いであり、人間性がよく表れる。ドラマにしがいがある」と話す。

 経営陣による企業買収(MBO)を題材にしたのがWOWOWが一月八日に放送した単発ドラマ「MBO」だ。大株主(平幹二朗)から解任を告げられたデパート社長(三上博史)が、外資系ファンドと組んでMBOによる経営権奪還をめざす姿を描いた。MBOは一九九〇年代後半から日本で使われ始めた手法で、最近ではワールドなどが株式非公開化のためにMBOを使い、話題となった。

 高成長振り返る

 TBS系で放送中の「華麗なる一族」(日曜夜)は約三十年前の企業活動を描く。山崎豊子が七三年に出版した原作は、一九六〇年代後半を舞台に、金融再編にのみこまれた銀行頭取一族の悲劇を描いた。今回のドラマでは一族の一員である特殊鋼メーカー専務、万俵鉄平(木村拓哉)を主人公に、モノ作りに命をかけた男の物語として描く。

 当時は銀行の大型合併が重なった。七一年に第一銀行と日本勧業銀行が合併。七三年には小説のモデルと指摘される神戸銀行が太陽銀行と合併した。六〇年代は製造業が急成長した時代でもある。

 企画した瀬戸口克陽プロデューサーは「山崎氏が描いた時代は、現代の原点=B金融再編が本格的に始まり、日本経済の基礎であるモノ作りが重んじられた。戦後経済の成長とともに歩んできた団塊の世代が定年を迎えつつある今、当時を振り返るドラマを作る意味は大きい」と強調する。

 身近なテーマに 企業ドラマが相次ぐ背景を、ドラマ事情に詳しい法政大学の藤田真文教授は「再編や買収のニュースが身近になり、制作陣にとって採りあげやすい題材となった」と分析する。視聴者の意識の変化も大きい。「ドラマといえば家族物や恋愛物だったが、物語がパターン化され、飽きられてしまった。今の視聴者は現実味を重視する。企業を題材にしたドラマは設定や話に現実味を出しやすく、働く視聴者の共感を得やすい」と指摘する。

 「ハゲタカ」の原作者である真山仁は「会社は誰のものかという間いは、多くの人にとって現実的な命題だ。自分たちの会社=Aいつ自分たち≠フものでなくなるか分からない時代、ドラマが見る人にとって、自分の働く環境を振り返るきっかけになれば」と話す。

 「ドラマは娯楽である以上、前向きな要素も必要。いくら現実味が大事といっても、リストラなど暗い話は扱いづらい。買収や合併は前向きな結果を生むこともあり、娯楽になりうる」と藤田氏。失われた十年≠ニ呼ばれた九〇年代、企業ドラマでめぼしい作品は登場しなかった。企業ドラマの増加は、企業を娯楽の対象として描けるほどに日本経済が回復してきた表れなのかもしれない。(文化部 海野太郎)
(「日経 夕刊」20070116)

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主張 「構造改革」
非人間的な経済の転換点に

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 安倍首相は「改革の成果が表れ、未来への明るい展望が開けてきた」と胸を張っています。その足元で、「構造改革」の矛盾とゆきづまりが次々と表面化しています。

節度を失った経営者

 昨年は年明け早々、ライブドアに東京地検の家宅捜査が入り、政府・与党に衝撃を与えました。証券取引法違反の容疑で逮捕された堀江貴文社長(当時)を、安倍首相(当時官房長官)らが「改革の旗手」と持ち上げてきたからです。

 後を追うように六月、もう一人の「改革の旗手」・村上ファンドの村上世彰代表(当時)も、インサイダー取引事件で逮捕されました。

 村上ファンドは、政府の規制緩和委員会のトップに君臨してきた宮内義彦オリックス会長の後ろ盾で設立されました。「通貨の番人」日銀の福井総裁が広告塔になり、自ら投資もして利益をあげていました。

 「金で買えないものはない」(堀江氏)、「金もうけは悪いことなのか」(村上氏)と公言してきた「改革勝ち組」の破たんです。「構造改革」直系の「六本木ヒルズ資本主義」は、株ころがし、会社ころがしの「錬金術」で、短期に手軽な大もうけを狙ったマネーゲームにすぎないことが明白となりました。

 短期的な利益に目を奪われた経営は「ヒルズ」に限りません。財界団体の旗振りで、日本を代表する大企業がいっせいに、企業の最大の財産である従業員の雇用と賃金の削減を経営計画の柱にすえてきました。目先の利益を確保して、株式市場などで高い評価を得るためです。

 日本経団連の御手洗会長のキヤノンをはじめ、財界のリーダー企業が違法な「偽装請負」に手を染めていたことが明らかになったように、財界ぐるみの退廃が進んでいます。御手洗会長が「今の法律が悪い」と開き直り、「偽装請負」を合法化する法律改悪を政府に要求したことは、その最悪の象徴です。

 財界はさらにお手軽に利益を増やすために法人税の実効税率を10%引き下げ、低所得者ほど負担が重い消費税の増税で穴埋めする方針を掲げています。

 安易な受益に慣れた経営者は、あからさまに弱者に負担を転嫁してまで利益を増やそうとするほど、モラルを失ってしまったようです。

 大企業が正社員の人件費を抑制するために導入した成果主義は、長時間労働やストレスによる健康被害と低賃金を拡大しています。ソニー元幹部が「成果主義がソニーを破壊した」と告発しているように、経営そのものをむしばんでいます。

 大企業の短期的な利益を第一に追求する「構造改革」の根本矛盾です。こんなやり方には「イノベーション」(技術革新、新結合)どころか持続的な経営さえありません。

連帯大きく広げて

 〇六年は青年や障害者らの連帯とたたかいが広がり、実を結び始めた年になりました。それと連携して日本共産党も国会で追及しました。

 国民のたたかいを反映して、NHKが二回にわたって放送した番組「ワーキングプア」が大きな反響を呼びました。視聴者が、今後は「雇用する側」に考えさせる企画を期待すると意見を寄せています。

 目先の利益第一で人間性をないがしろにする経営と、それを応援する政治に対して国民の疑問と批判が連鎖反応を起こし始めています。

 ことしを、人間らしい経済への転換点とするために、世論と連帯を大きく広げようではありませんか。
(「赤旗」20070103)

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綱領の日本社会論を広く国民のものに

 最後に、日本の政治と経済にたいする綱領のこれらの見方を、広く国民の理解にしてゆくうえで、重視する必要のある点を、あげておきたい、と思います。

(1) 一つは、大企業の横暴≠間題にするとき、言葉の上だけでの決めつけでは、ダメだということです。そこを分かってもらうためには、大企業の横暴なやり方が、どこにどう現われていて、国民の一人ひとりが、現実にこういう被害をうけている、ということを、事実できちんと示してゆく活動が大事です。それを積み重ねてはじめて、大企業の横暴をおさえるところに、日本経済の現状打開の中心的なカギの一つがあることを、理解してもらうことができます。

 以前には、大企業の横暴がもっとむき出しで現われて、すべての野党が財界中心の政治反対≠となえ、自民党までが、大企業中心主義の政治への反省を口にせざるをえなくなった時期もありました。七〇年代、公害が日本中をおおい、また石油ショックで国民生活が大打撃をうけたときに、石油会社が千載一遇の好機≠ニ叫んだりした時には、大企業本位の政治に反対する私たちの立場は、あまり詳しい説明をしないでも、国民のあいだに理解や共感が広がったものでした。

 しかし、相手側も、そこから多くの教訓を学び、世論に働きかける対策も講じてきました。八〇年代前半の「臨調行革」の時代に、政府が経団連の土光敏夫会長をその責任者にして、「公的機関は民間に学べ」と大宣伝したことを、覚えている方もいるでしょう。このキャンペーンのなかでは、「民間」、つまり大企業は、国民を横暴な支配でおさえつける支配者どころか、経済活動の上で、また生活の上で、国民の手本になる存在にまでまつり上げられました。

この流れは、基調としては、いまの「民間でできることは民間へ」という小泉内閣の合言葉にまで引き継がれています。相手側は、国民の経済的な不満や抗議が、あの公害や石油ショックの時期のように、大企業の横暴という現実を直撃することのないように、そういう手だてまでつくしてきているのです。

 それだけに、大企業の横暴にたいする批判を言葉だけの決めつけですますことは、事実の分析に裏づけられた綱領の的確な批判を、上すべりする空文句に変えてしまうことになります。いつでも、事実で証明しながら、だれも否定できない事実の力をもって訴えることに、努力の中心をおかなければなりません。
(不破哲三著「新・日本共産党の綱領を読む」新日本出版社 p165-167)

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◎「 目先の利益第一で人間性をないがしろにする経営と、それを応援する政治に対して国民の疑問と批判が連鎖反応を起こし始めています」と。