学習通信050929
◎いつも目先きの刺激にばかり……
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考える子に
「ちょっと文子ちゃん、お友だちを見てごらん。だれもそんなことしないでしょ。あんただけでしょ。はやくやめなさい」といってしかっているおかあさんをよく見かけます。
これは、よいしつけにふさわしいことばではありません。いつもまわりを気にしなさいということになります。これでは、『裸の王様』に出てくるおとなたちをつくることになりはしないでしょうか。
友だちのだれもしなくても、いいことだったらする。みんながしていても、わるいことはしない。ここでいま、こういうことをすることはいいことなのか、わるいことなのか、子どもの年齢なりに自分の頭で考えてみるようにしむけることが、大切です。
自分の頭で考える(それこそ本当に頭のいい子)に育てるためには、二つの点が大切です。
ひとつは、いつも目先きの刺激にばかりひっかかっていない子、眼前にないものを思い浮かべることのできる子にすることです。「マリ」を知っている子は目の前にマリがなくてもマリのことが考えられます。それにはたくさんの具体物を見聞させること。いいかえればゆたかな生活経験をさせて、それをことばにしておくことです。そうすれば、ことばによっていきいきとイメージをえがくことができます。そうするうちに、本や話を聞かされても、想像し、思考することができるようになります。経験のとぼしいままで、多くのことばをつめこんでも、それは子どもにとって借りものの知識で、自分で考えるには、あまり役立たないのです。
もうひとつは、子どもに考えていることをいわせ、対話によってそれを確かなものにうながしてやることです。子ども同士の集団は思考の度合いがだいたい似ているので、いちばんいいのです。が、家庭でも、子どもと対等な立場で話し合うことです。忙しいと、とかく結果だけをおしつけたり、子どもが苦労して話そうとしているのに、おとなのこどばで、さきにいってしまったりしがちです。
時間をかけて、ゆっくり話し合うことが大切です。「そのときあんたどうしたの?」「どうして?」「なぜそう考えたの?」「そう、かあさんだったらこうするけれど(どっちがいいのかな)」というように、よい聞き手になってあげることです。子ども自身の考えをひきだす相手になってあげることです。そうすると、子どもは、自分の考えをいい、他人の考えを聞き、より正しいものを求めるようになっていきます。
社会性、勇気と実行力、やさしい心、情操などは、すべてこういう考える能力のうえに育つものなのです。
(近藤・好永・橋本・天野「子どものしつけ百話」新日本新書 p48-49)
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わたしはくりかえして言おう。人間の教育は誕生とともにはじまる。話をするまえに、人の言うことを聞きわけるまえに、人間はすでに学びはじめている。経験は授業に先だつ。
(ルソー著「エミール 上」岩波文庫 p71)
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◎「経験のとぼしいままで、多くのことばをつめこんでも、それは子どもにとって借りものの知識で、自分で考えるには、あまり役立たない」と。