〝学習通信〟050923
◎生活の体験から社会主義を学びつつ……
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うごいている巨大な大衆のこれらさまざまな要素──ほんとうに不一致なのではなくて、じっさい、それぞれの出発点がさまざまであるために、たがいに孤立している諸要素──の融合の過程は、いくらかの時間を必要とするし、またいまでさえ各地で見られるような、ある程度の摩擦なしにはすまないであろう。
たとえば、労働騎士団は、東部の諸都市のあちこちで、組織された労働組合と局地的な争いをおこしている。
しかしこれと同じ摩擦は、労働騎士団自体の内部にもあり、そこにあるのは、平和と融和どころではない。これは、資本家が勝ち誇ってよいような衰微の兆候ではない。
それはただ、いまはじめて共通の方向にむかって運動しだした無数の労働者の大軍が、自分たちの共通の利害をあらわす適当な表現も、闘争に最もふさわしい組織形態も、勝利を確保するのに必要な規律も、まだ見つけだしていない、ということのしるしにすぎない。
彼らはまだ、地方で独立に募集され、武装された、大革命戦争最初の充員召集〔levies en masse〕であって、一つの共通な軍隊をつくるために、彼ら全員が集中しつつあるが、まだ正規な組織と共通な作戦計画をもっていない。集中しつつある諸縦隊はあちこちでたがいに交差する。混乱や、激論や、衝突の脅威さえ生まれる。
だが、究極の目的が共通であることは、けっきょく、いっさいのちっぽけな紛争を克服する。
やがて、ばらばらに進軍し、口論している諸大隊は、敵にたいして整然とした正面を向け、きらめく武器のもとで無気味な沈黙をまもり、前線は大胆な散兵によって援護され、その背後はものに動じない予備軍によって援護された、一列の長い戦闘隊形に編成されるであろう。
このような成果をもたらすために、さまざまな独立の部隊が、たとえどんなに不適当な暫定綱領をもっていようとも、それが真に労働者階級の綱領であるかぎりは、これらの部隊を、一つの全国的な労働者の軍隊に統合すること──これがアメリカにおいてなしとげられるべき次の一歩である。
もしも社会主義労働党が、かつてヨーロッパの社会主義者たちが労働者階級のほんの少数者にすぎなかったころに活動したのと同じやり方で活動しさえすれば、この党は、これを達成することに、またこの綱領をその事業にふさわしいものにすることに、大きな貢献をすることができるのだ。この活動方針は、一八四八年の『共産党宣言』のなかで、はじめて次のようなことばで示された。
「共産主義者」──これがその当時われわれの採用した名まえであって、今日でもわれわれはけっしてこの名まえを拒否しようとは思っていない──「共産主義者は、他の労働者諸党に対立する別個の政党ではない。
彼らは、労働者階級全体の利害からきりはなされた、別個の利害をなにももっていない。
彼らは、自分自身のセクト的な原理をかかげて、それによってプロレタリア運動をかたちづくり、その型にはめようとするものではない。
共産主義者が、その他の労働者諸党と異なるのは、ただ次の点においてである。（一）彼らは、さまざまな国のプロレタリアの一国的闘争において、プロレタリアート全体の共通の利益、国籍にまったくかかわらない利益を指摘し、前面に押しだす。（二）彼らは、資本家階級にたいする労働者階級の闘争が経過しなければならないさまざまな発展段階において、つねに、またどこでも、運動全体の利益を代表する。
だから、共産主義者は、一方では、実践的には、すべての国の労働者諸党のうちで、最も進歩した、断固たる部分であり、他のすべての者をたえず推進してゆく部分である。他方では、理論的には、プロレタリア運動の進路、諸条件および終局の一般的結果をはっきり理解している点で、大多数のプロレタリアにまさっている。……
このように彼らは、労働者階級の当面の目的を達成するため、その当面の利益を貫徹するためにたたかうが、しかし、現在の運動のなかにあって、運動の未来を代表し、配慮する。」
これが、近代社会主義の偉大な創始者、カール・マルクスが、そして彼とともに私やわれわれといっしょに活動した万国の社会主義者が、四○年以上ものあいだ守ってきた活動方針である。その結果、この方針はいたるところで勝利をもたらしてきたし、またいまこの瞬間においても、ヨーロッパの多数の社会主義者は、ドイツにおいてもフランスにおいても、ベルギー、オランダ、スイスにおいても、デンマークやスウェーデンにおいても、またスペインおよびポルトガルにおいても、一つの共通な軍隊として、同じ旗のもとでたたかっているのである。
ロンドン、一八八七年一月二六日 フリードリヒ・エングルス
（エンゲルス著「アメリカの労働運動」Ｍ・Ｅ八巻選集 大月書店 p96-98）
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アメリカの事情
ロチェスター市でひらかれていた「アメリカ労働総同盟」──労働組合組織の連合体はこう呼ばれている──の第三二回年次大会の会議が終わった。急速に成長しつつある社会党とならびたつこの連合体は、過去の──アメリカの労働者階級の貴族にあらゆる点でのしかかっている、同職組合的な、自由主義的＝ブルジョア的な旧伝統の──生きた残存物である。
総同盟員数は、一九一一年八月三一日には、一八四万一二六八人であった。会長には、社会主義の断固たる反対者であるサミュエル・ゴンパーズが、再選された。しかし社会党系の労働者のおした候補者マックス・ヘイズ(Hayes)も、ゴンパーズの一万一九七四票にたいして五〇七四票を獲得した。ところが、以前にはゴンパーズは全員一致で選ばれていたものである。アメリカの労働組合運動における「組合主義者」と社会主義との闘争は、徐々にではあるが確実に、前者にたいする後者の勝利に導きつつある。
ゴンパーズは「労資協調」というブルジョアの作り話をまったく信じきっているばかりでなく、総同盟のなかで社会主義的政策に反対してブルジョア的政策を公然と遂行している──口先では労働組合の完全な政治的「中立性」を擁護しているとはいえ！ 最近のアメリカの大統領選挙のときにゴンパーズは総同盟の正式機関紙に、ブルジョア三政党全部（民主党、共和党、進歩党）の綱領と政綱をのせたが、社会党の綱領はのせなかった！
ロチェスターの大会では、ゴンパーズの支持者のあいだからさえ、このようなふるまいにたいする抗議の声があがった。
アメリカの労働運動における事態は、イギリスの場合と同じく、純組合主義的な志向と社会主義的な志向との目だって鋭い分裂、ブルジョア的労働者政治と社会主義的労働者政治との分裂を、われわれに示している。プルジョア的労働者政治という理由は、この言葉がどんなに奇妙にひびくとしても、もし労働者階級が自分の解放目的を忘れ、賃金奴隷制と和解して、自分の奴隷状態をみせかけの「改善」のために、あるときはあるブルジョア政党と、あるときは他のブルジョア政党と同盟を結ぶことに腐心するにとどまるならば、資本主義社会では、労働者階級もブルジョア的政治をおこなうことになりかねないからである。
イギリスとアメリカでブルジョア的労働者政治をとくに明瞭で有力なものにした（一時的に）主要な歴史的原因は、古くからの政治的自由と、資本主義の内包的および外延的発展にとって、他国にくらべて異常に有利な条件があったことである。これらの条件があったため、労働者階級のなかに、ブルジョアジーに追随して、自分の階級を裏切った貴族が出てきたのである。
二〇世紀には、イギリスとアメリカの事情のこの特殊性は急速に消滅しつつある。他の国々がアングロ＝サクソン資本主義に追いつこうとしているし、労働者の大衆は、生活の体験から社会主義を学びつつある。世界資本主義の成長が急速にすすめばすすむほど、アメリカとイギリスにおける社会主義の勝利はそれだけ早くやってくるであろう。
一九一二年一二月八月以前に執筆
（「レーニン 労働組合ー理論と実践 下」大月書店 p847-848）
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◎「このように彼らは、労働者階級の当面の目的を達成するため、その当面の利益を貫徹するためにたたかうが、しかし、現在の運動のなかにあって、運動の未来を代表し、配慮する」と。