学習通信030910
◎イギリスの労働者はこれを社会的殺人と名づけ、こういう犯罪を絶えずおかしているとして、社会全体を告発している
 
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怖さ知らされないまま 取材メモ
 
 ○……ブリヂストン工場の大火災(栃木)、新日鉄名古屋製鉄所(愛知)のガスタンク爆発…。大企業の大型事故が相欠いでいます。人員と経費の削減、安全対策の軽視が原因ではないか、と指摘されています。「リストラ反対、雇用と地域経済を守る全国交流集会」(9月3-4日、静岡県)で聞いた名古屋製鉄所の労働者の発言がよみがえります。
 
 ○……「十分な研修もないまま、機械操作のマニュアルだけ教えられて仕事につかされている。現場の怖さ、機械の怖さを知らされていない。しかも1人作業が多い。順調に機械が動いているときはいいが、何か不具合が起きると、どう対処していいかわからない」
 
 ○……猛烈な人減らしをしてきた製鉄業界。事故の損失は300億円といわれています。自動車業界など、取弓先の信用も大きく傷つけました。企業の利益のために労働者の命と安全を二の次にしたリストラにつくぐリストラ。こんな大企業の身勝手を規制するルールが必要です。(は)
雇用とは企業の利潤を追求するのに伴って生まれるもの
(しんぶん赤旗 030910)
 
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 私たちの世代か子どものころ、周りには自営業の人がたくさんいました。普通「仕事をする」といったら自分でお店を経営することを指していて、大企業に勤めるのは特殊な人という印象すらあったと思います。
 
 ところが、いまは「仕事をする」といえばサラリーマンを指すのが一般的になっています。自営業者は大幅に減り、しかも、その自営業者のうち約三分の二は五〇歳以上というデータがあります。いまの若い人は圧倒的に企業に勤めることを前提にしています。
 
 この背景には、大学教育の大衆化が進んだことがあると思います。日本では、以前から大企業に入るために大学に行くというメンタリティーがありました。ですから、大学が大衆化し、大学を卒業したら大企業のサラリーマンになるのが当たり前、となってしまいました。
 
 ところが、私がハーバード大学で教えていたころ、アメリカの学生に将来何になりたいかを聞いたところ、大半が「自分でビジネスを起こしたい」という答えで、会社に勤める、つまり人に使われたいなどという人は、あまりいませんでした。
 
 もちろん、彼らのなかでマイクロソフト社のビル・ゲイツのように大成功できる人はごく一部しかいないでしょう。けれども、彼らはそうなりたいという志は持っていたのです。
 
 日本の若い人のなかにも、自分でビジネスを起こしたいと考える人がいないわけではありません。しかし、先にも紹介しましたが、起業したい人は一二〇万人もいるのに対して、実際にビジネスを始める人は毎年一八万人しかいないのが現実です。多くの人が、雇われるほうを選ぶという流れが社会全体に出てきているのです。
 
 ところが、その雇う側の企業のなかに、経済の競争についていけないところが次々と出てきました。シュンペーターという経済学者は、こんな言葉を残しています。
 「資本主義は、その成功のゆえに失敗する」
 
 この言葉は企業の盛衰によく当てはまります。どこの会社も、最初は高い志を抱いて頑張ります。しかし、成功して会社が大きくなっていくにつれて、必ず官僚化していきます。社長が祭り上げられて、社長の周りには多くの取り巻きがへばりつき、社長はオフィスの奥のふかふかのソファに座ったままになって、現場の声が聞こえなくなる。マーケットの動向も見えなくなる。そして会社は衰退していきます。
 
 なぜ衰退するかといえば、それは成功したからです。つまり、成功したことで組織が硬直化し、これが衰退を招く原因になるのです。
 
 経済というのはもともとそうした宿命を負っているのですが、日本の大企業の場合には、加えて、一九九〇年代以降のすさまじいグローバル化とIT(情報技術)化に乗り遅れたという面があります。そのなかで、いま日本の一部大企業は大きな試練を受けているといってもよいと思います。
 
 当然のことながら、そのなかで雇用されている人間も大きな試練を受けることになります。雇用とは企業活動の結果として派生的に発生するものです。つまり、そもそも企業は人を雇うために存在しているわけではありません。あくまでも利潤を追求するため、儲けることを目的に存在しているわけで、その目的のために、資本だけでなく労働も必要になるのです。このために労働需要が生まれて雇用が発生するのです。
 
したがって、企業の利益の動向によって雇用も影響を受けざるを得なくなります。その影響は、どれだけ人を雇うかという雇用数にも出てきますが、同時に、どのような形態で雇うかという面にも表れます。これは、働く側からすると、働き方に大きな変化を与えます。
(竹中平蔵著「あしたの経済学」幻冬舎 p244-246)
 
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リストラ時代をいかに生き延びるか
 
理念がない日本のリストラ
 
 ー総務省の労働力調査によると、六月の完全失業率は五・三%で、リストラを始め、勤め先の都合で離職を余儀なくされた人は全国で百十七万人、世帯主の失業者数も百万人にのぼっています。
 
森永 私は基本的には、日本の企業がいまやっているリストラは単なる人件費圧縮策というか、「くび切りをしたいだけのためのリストラ」だと思っています。そこに理念がまったくないというのが一番の大きな問題だと思うんですね。
 
 なぜそう考えるかというと、成果主義とかリストラとか、いま行われている人事は全部同じなんですけれども、本来であれば社員本人に仕事上の選択権を自由に与えたうえで、その結果、成果が上がらないという理由でリストラをするのであればまだいいんです。
 
ところが日本の大部分の企業は「時代が変わった」と言いながらも人事部一括採用。人事部が社員を人事の都合で配属させて、キャリア形成の権利についても本人の選択権はゼロ、職種も一切選択権がない。
 
そんな中で、誰がやったってこんなところでは利益なんか絶対出せないよというところに異動させておいて「ほら、あなた成績出せないでしょ。だから貸下げ、くび切りよ」というのをさんざんやっているというのが実態なんです。そこがすごくインチキというか、アメリカ型システムのおいしいとこ取りをしているだけなんだと思いますね。
 
 たしかにアメリカでも超エリートの人たちはどんどん転勤させられていますけれど、一般のサラリーマンはというと、自分で事業所を選んでよほどのことがない限り転勤はさせられないし、会社が転勤させる時にも本人の合意を取ってから転勤命令を出す。
 
これに対して日本はもう「赤紙」です。赤紙が来たらどこにでも行かなきやいけないというふうにしておいて「成果を出せ」も何もないだろうと思うんです。
 
梅森 たしかに職種や仕事の中身を自分で選ぶ外資系企業の場合は、日本においても転勤はほとんどなくて、せいぜい東京に行くか大阪に行くかぐらいしかない。就業規則には一応「会社が配転命令権を持っている」と書いてはあるけれど、やはり簡単には動かせないんです。
 
なぜかと言うと、会社としても本音は社員の「マキシマム・パフォーマンス」、最大の働きがほしいという考えがありますからね。本人が好きで働くところでなければ最大限の利益というかリターンが得られないということをわかっている。そこが日本の企業とは違うところです。
 
森永 日本企業のリストラが抱えるもう一つの問題というのは適用範囲です。たぶん世の中には二種類というか、極端に分けると二つの仕事があって、一つは、私は「表方の仕事」と呼んでいるんですけれども、例えばインベストメント・バンカーとかデザイナーとかクリエーターとか、そういう知的創造型の仕事をしている人たち。
 
もう一つは単に帳簿をつけているだとか、ものづくりをしているだとか、チームで仕事をしていても何か新しいものを創り出すんじゃなくて、逆に何事も起こさずに無事に何かを達成するという「裏方の仕事」、その二種類がある。私は表方の仕事については弱肉強食で行ってもかまわないし、行くしかないんだと思っているんですけど、世の中のたぶん半分ぐらいの人というのはそれとは違う裏方の仕事を地味にやっているんですね。
 
私は裏方の仕事にまで成果主義とかリストラとかを持ち込むというのは根本的に間違っていると思うんです。
 
 どうしても会社が賃金を払えないんだったら、社員の雇用を守るために賃金を下げて、何とかやりくりして景気が戻るまで我慢するという方法が私は正しいと思っています。なぜなら、そうしないと製品の質を守れないのです。例えば、ものづくりみたいな仕事というのは積み重ねなんですよ。「この人のくびを切って、また必要だったら別の人を採ればいいや」という話ではない。それではシステムが壊れてしまう。
 
反対にディーラーは取り換えがきくんですよ。もっと稼げるディーラーを連れてくればそれで済むわけです。ところが裏方の仕事というのは同じチームで時間をかけて日々の改善を積み重ねていかなきやいけない。日本の企業はいま、その二種類の仕事をごつちゃにしてリストラを行っている。(月刊誌「論座」10月号 p92-94)
 
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自殺「借金など動機」急増
 
 昨年一年間の自殺者は前年より千百一人(三・五%)多い三万二千百四十三人に上り、五年連続で三万人を超えたことが二十四日、警察庁のまとめで分かった。借金などの「経済・生活問題」が動機とみられる自殺が七千九百四十人で過去最悪を記録するなど、長引く不況の影響がうかがえる。
 
 同庁が統計を取り始めた一九七八年以降、年間百殺音数が最も多かったのは九九年の三万三千四十八人で、今回は三番目に悪い結果。人口十万人当たりの自殺者数をあらわす「自殺率」は二十五・二で、前年を〇・八ポイント上回った。
 
 男女別にみると、男性が全体の七割強にあたる二万三千八十人。年代別では、六十歳以上が一万一千百十九人で最も多く、五十歳代八千四百六十二人、四十歳代四千八百十三人の帳。四十歳代以上の中高年が全体の七五・九%を占めた。
 
 原因・動機別では最も多い「健康開港」が一万四千八百十五人で全体の半数近くを占めているが、前年よりはやや減少。一方、二番目に多い「経済・生活問題」は前年より千九十五人(一六・〇%)増え、過去最悪だった前年の記録をさらに更新した。「家庭間題」は二千七百四十六人だった。(日経新聞 030725)
 
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 そしてロンドンについてあてはまることは、マンチェスターやバーミンガム、リーズにも、すべての大都市にもあてはまる。どこにおいても、一方では野蛮な無関心と利己的な非情さが、そして他方では言語に絶する悲惨さがあり、どこにおいても社会戦争があって、どの家も厳重に警戒しており、どこにおいても法律の保護の下でおたがいが略奪しあっている。
 
そしてこれらすべてのことがあまりにも恥知らずに、あまりにも公然とおこなわれているので、ここであからさまにあらわれているようなわれわれの社会状態の諸結果に人はおどろき、恐れ、こういう気違いじみた行為がとにかく温存されていることを不思議に思うだけである。
 
 この社会戦争においては、資本、すなわち生活手段と生産手段の直接あるいは間接の所有が戦争をするための武器なのだから、こういう状態の不利益がすべて貧民にかぶせられてくることはあきらかである。
 
誰も貧民のことは心配してくれない。貧民は荒波のなかへ投げこまれ、全力をつくして切りぬけていかなければならない。幸運にも仕事にありついたとしても、すなわち、ブルジョアジーが彼を使って金もうけをしようというお恵みを与えてくれたとしても、彼には身体と魂とを結びつけておくだけでやっとという賃金が待っているのである。
 
仕事にありつけないときには、警察がこわくなければ盗みをすることができるが、そうでなければ餓死することができる。ただしこの場合にも、警察は彼が静かに、ブルジョアジーの気にさわらないように、餓死するよう配慮してくれるであろう。
 
私がイギリスに滞在しているあいだに、少なくとも二〇人から三〇人の人が、まったく腹だたしい状態のもとで、直接に飢えのために死亡した。そしてその検死のときにこのことを率直にのべる勇気のある陪審員はほとんどいなかった。
 
証人の供述がどんなに明白で、どんなに疑問の余地のないものであっても──ブルジョアジーは、自分たちのなかから陪審員がえらばれているので、餓死という恐ろしい判決をまぬかれる逃げ道をいつももっていた。しかしこの場合、ブルジョアジーは真実を語ることは許されない。真実を語れば自分自身に有罪判決をくだすことになるであろう。
 
しかし間接的には多くの人が──直接的によりもさらに多くの人が──餓死している。というのは、十分な生活手段がずっと不足しているために生命にかかわる病気がひきおこされ、その犠牲者の生命が奪いとられるからである。
 
さらに、生活手段の不足のために衰弱し、そうでなければ無事にすごせたであろうような場合でも、必然的に重病と死がひきおこされるからである。イギリスの労働者はこれを社会的殺人と名づけ、こういう犯罪を絶えずおかしているとして、社会全体を告発している。彼らは間違っているだろうか?
 
 もちろん、餓死する人は少数にすぎない ──しかし労働者には、明日にでも自分がその列に加わらないという保証があるだろうか? 誰が労働者にその地位を保証してくれるだろうか? 彼が明日にでも雇主から、なんらかの理由で、あるいは理由もなく、解雇されたときに、彼に「パンを与えてくれる」次の雇主を見つけるまで、家族とともになんとか暮らしていく保証を、誰が与えてくれるだろうか。
 
すすんで働く気さえあれば仕事にありつけるとか、正直、勤勉、節約、その他、賢明なブルジョアジーが彼にすすめてくれる多くの美徳が、ほんとうに幸福にいたる道であることを、誰が労働者に保証してくれるのか? 誰も保証はしてくれない。
 
労働者は、今日はいくらか持っていても、明日もやはりいくらか持っているかどうかは自分では決められないということを知っている。
 
風向きが変わり、雇主の気が変わり、景気が悪くなれば、彼はそのたびに、一時的にはのがれでることのできたはげしい渦巻きのなかへまきこまれ、そこから浮かびあがることはきわめて困難であるか、しばしば不可能であるということを知っている。
 
彼は今日は生きていることができても、明日も生きていられるかどうかは、きわめて疑わしいということを知っている。
(エンゲルス著「イギリスのおける労働者階級の状態-上-」新日本出版社 p52-54)
 
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◎日本の労働者の状態は破壊的……といわれています。「イギリスのおける労働者階級の状態」は、資本主義のはじめ 本源的蓄積≠フ時代の労働者です。現代の日本で変わらない事態が進行しています。
 
◎月刊:経済は、10月号から「日本の勤労者──その労働と生活」と題して状態論≠フ連載がはじまりました。注目しましょう。
 
◎「資本の世界では労働者は自己を否定されている(「資本論草稿集」)」……情勢論講座第1講義で吉井先生が配布された資料の最終行です。「雇用とは企業活動の結果として派生的に発生するもの」と、竹中平蔵氏は言います。まさしく資本の代弁者ですね。